本授業の目的は、履修者が「知の理論(Theory of Knowledge, TOK)」の核心的な内容を理解するとともに、その社会的・学問的・教育的な位置付けについて深く洞察する力を養うことにあります。本授業では、現代社会における「知」の多様性と複雑性を認識し、履修者が自身の知識観を深化させることを重視します。
「知の理論(TOK)」は、国際バカロレア(IB)の必修科目として知られていますが、本授業ではその枠を超え、より広範な知識論の探求へと踏み出します。具体的には、知識を分析するための多様な理論や視点を提供し、それによって履修者が自らの知識や価値観を相対化し、新たな視座を獲得できるよう支援します。
さらに、「知の理論」は単なる学問的探究にとどまらず、私たちが日常生活や専門分野で直面する「知識」の創造(知識を生み出す)、普及(知識を共有する)、活用(知識を応用する)といったプロセスにおいて不可欠な視座を提供します。本授業では、これらの視座を通じて、履修者が現代社会における多様な課題に対処するための思考力と洞察力を磨くことを目指します。
履修者が「知の理論」を理解し、その社会的・学問的・教育的な意義を自ら説明できる。
履修者が「知の理論」のメタ的観点を活用し、自身の実践を実践知として位置付け、説明できる。
履修者が自身の研究領域についてその位置付けを説明し、その知識の意図や価値を他者に伝えることができる。
【第01週】
第1講:イントロダクション
本授業の全体像を示し、「知の理論(Theory of Knowledge, TOK)」とは何か、その意義と魅力について概説します。履修者が「知ること」についての探究の旅に出発するための準備を行います。
【第02週】
第2講:国際バカロレア(IB)とは何か
国際バカロレア(IB)の教育理念や構造を学び、その中で「知の理論」が果たす役割について理解します。IBの背景を知ることで、グローバルな視点での学びを深めます。
第3講:国際バカロレアにおける「知の理論(TOK)」
IBにおけるTOK科目の具体的な内容とその重要性について掘り下げます。IB教育における批判的思考や多様な視点を養う仕組みを学びます。
【第03週】
第4講:知識とは何か
「知識」とは何か、その本質や定義について考察します。哲学的な問いを通じて、知識への理解を深めます。
第5講:メタ知識――知識の知識
知識そのものを分析するための「メタ知識」の概念について学びます。知識がどのように構築され、文脈に依存しているかを探ります。
【第04週】
第6講:科学――科学的知識とは何か
科学哲学や科学的方法論を参照しながら、科学的知識の特徴や限界について考察します。現代社会で科学が果たす役割にも触れます。
第7講:真理――「真である」とは何か
真理とはどのような状態なのか、哲学的・実践的な観点から探究します。履修者自身が真理について深く考える機会を提供します。
【第05週】
第8講:自然・人文・社会――3つの知識カテゴリー
自然科学、人文学、社会科学という異なる領域における知識の特徴や相互関係について考察します。それぞれの分野が持つ独自性と共通性を探ります。
第9講:政治・教育――応用領域としての知識*
政治や教育という具体的な応用領域における知識の役割とその影響について検討します。現代社会で直面する課題との関連性も議論します。
【第06週】
第10講:認識論――知識にかかわる思想1
認識論という視点から、知識とは何か、人間はどのようにして「知る」のかについて概説します。哲学的基盤を学びます。
第11講:社会理論――知識にかかわる思想2
社会理論を通じて、社会的文脈で形成される知識について考察します。社会構造と知識との関係性にも触れます。
【第07週】
第12講:社会のなかの知識――その機能と役割
社会における知識が果たす機能や役割について分析します。特に、知識が創造・普及・活用されるプロセスに注目します。
第13講:実務教育学とは何か
実務教育学が目指すものとは何か、その基盤となる理論と実践について探究します。特に、実務家教員や実務経験を活かした教育方法論、実務教育学が現代社会で果たす役割について議論し、履修者自身がどのように実務と教育を結びつけられるかを考えます。
【第08週】
第14講:総括討論1――探究の振り返りと共有
これまで学んだ内容を振り返り、履修者同士で議論しながら理解を深めます。到達目標①・②への成果確認も行います。
第15講:総括討論2――研究領域とその意義の発表
履修者それぞれが自身の研究領域について発表し、その意義や価値を他者へ伝えます。到達目標③への成果確認として位置付けられます。
上記の目的および到達目標を達成するため、本授業では講義法、グループワーク法、ペアワーク法を組み合わせて実施します。それぞれの授業週では1つのトピックを深く考究する形式を採用し、90分×2コマを連続して行います。これにより、履修者がトピックに集中し、深い理解を得られるよう工夫しています。
また、各授業終了時にはコメントペーパーの提出を求めることで、履修者が授業内容を振り返り、自身の関心や理解を整理する機会を提供します。これにより、学習意欲を維持しながら、主体的な学びを促進します。
※リサーチワークとは、本授業で扱った内容を基に、履修者自身の関心に応じた研究活動を実践することを指します。
以下の観点ごとに評価を行い、総合点を100点満点として換算する。60点以上を取得した場合に単位を付与する。
コメントペーパー(35%)
各授業ごとにコメントペーパーを作成し、提出を求める。
関連する到達目標: ①「知の理論」を理解し、その意義を説明できること、および②「知の理論」のメタ的観点を活用して自身の実践を実践知として説明できること。理由: コメントペーパーは、授業内容や履修者自身の理解を文章化し、深く考察する機会を提供します。これにより、履修者が「知の理論」の概念やその応用についてどれだけ理解しているかを測定できると考えています。
最終授業回でのディスカッションおよび発表(65%)
最終授業回でのディスカッションや発表を通じて評価を行う。
関連する到達目標: ③自身の研究領域について位置付けを説明し、その知識の意図や価値を他者に伝えること。理由: ディスカッションや発表は、履修者が自分の研究領域について他者にわかりやすく説明し、議論を通じてその価値を共有する能力を評価する場です。このプロセスは、到達目標③に直接対応していると考えます。